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日本人はグローバルビジネスでこう戦え! グローバルマネジャーには多様性を価値に変える組織マネジメントが求められる いま日本企業のグローバル化は新しい局面を迎えているという。そんなグローバルビジネスの最前線で、我々日本に人はどう戦っていけばいいのか、外国人社員の採用、育成、活用など、グローバルに特化した組織・人事コンサルティングを手がける株式会社ジェイエーエスの代表を務める小平達也さん。グローバル人材戦略の最前線にいる小平さんに、今後、グローバルビジネスで戦っていくうえでのヒントを伺った。

小平  達也氏 グローバル人材戦略研究所所長、株式会社ジェイエーエス 代表取締役社長 日本企業のグローバル展開を組織・人材マネジメントの側面から支援している。厚生労働省、文部科学省ほか政府関係機関の有識者会議座長・委員、大学院講師なども務め、幅広く活動。外国人人材の採用・活用について、豊富な経験に基づく独自ノウハウと100の事例を収録した『<グローバル採用の教科書>外国人社員 採用・活用ハンドブック』(ジェイエーエス刊)は、グローバル化を進める各社人事部にとって定番アイテムとなっている。

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いまやグローバル競争は人材獲得・育成競争に
ダイバーシティや違いを価値に変える組織マネジメント
「議論」と「対話」の違いを うまく使い分けてコミュニケーションする

いまやグローバル競争は人材獲得・育成競争に

 小平さんは、「グローバル事業を展開する多くの企業が、海外で活躍できる人材の獲得ばかりに意識がいってしまい、能力のある人材が力を発揮するための環境づくり、肝心の組織マネジメントが追いついていない」と指摘する。グローバル事業では人材の活用が「経営の死角」になっているというのだ。

 日本企業がグローバル市場に活路を見いだし始めたのは1980年代である。そして、90年代に入るとコスト削減を求めて海外に生産拠点を築き、2000年代には販売・生産機能の現地化が進んだ。そしていま、企業のグローバル展開は新たなフェーズに入っていると小平達也氏は言う。まず、その新しい潮流について伺ってみた。

 「一言でグローバル展開といっても、さまざまなパターンがあります。本社機能の視点からいうと、まず『既存の本社がグローバル経営を推進』するケース。あくまで本社機能は国内にあって、国内外に広がる事業をどう管理していくかということです。これがいままでの主流でした。次に『グローバル本社の設置』です。グローバル経営上、意思決定を行うために、日本に限らず最適な場所に本社機能を設置するという考え方です。いまは、この “ グローバル最適経営 ” のあり方が問われるようになりました。さらに、シンガポールなどの海外に『地域本社、第2本社を設置』するケースが急速に増えています。本社機能とは、製造や物流といった事業活動ではなく、計画・財務、情報システム、人事・労務管理、技術開発などです」

 人口減少による国内市場の縮小、新興国市場の急成長などにより、企業のグローバル展開は加速している。しかし、それは日本だけのことではない。先進国、新興国を問わずグローバル競争の激化が進んでいるのだ。そのため、グローバル最適経営の模索が進んでいると小平さんは言う。では、グローバル展開を進めるうえで、その原動力となるのは何か。

 「間違いなく人材です。グローバル競争に勝てるかどうかは、いかにグローバル人材を採用し、育成するか、また、それを活用できるかといった組織のマネジメントにかかっています。グローバル競争は人材獲得・育成競争になっていると言っても過言ではありません」

 冒頭にあったように大手グローバル企業は80年代からグローバル展開を進めてきた。約30年が経ったいまでも、グローバル人材の活用は進んでいないのだろうか? 率直な疑問をぶつけてみた。

 「グローバル最適経営はまだまだ発展段階にあります。2011年の通商白書によると、『新興国市場開拓で直面している社内外の課題』は、 “ コスト競争の激化による収益の悪化 ” の次に “ 海外要員が不足している ” となっています。人材獲得の重要性は認識しているのです。しかし、いざそうした人材を活用するための “ 組織マネジメント ” について見てみると、『日本企業の海外事業における強み』では、 “ 高品質 ” や “ ブランド力 ” が上位に挙がり、 “ 組織マネジメント ” はワーストのほうです。一方、『弱み』は “ 低価格 ” などですが、ここでも“組織マネジメント ” はワーストのほうです。つまり、強みとも弱みとも感じていない、経営の死角になっていることが分かります。グローバル人材獲得の重要性は分かっているにもかかわらず、人材活用や組織マネジメントについてはまだまだこれから、といったところなのです」

 もうひとつのポイントは、グローバル展開の変遷に合わせて、求められる人材も変わってきたということだ。グローバル最適経営が進められるなか、グローバル人材にはどのような能力が求められているのだろうか?

 「それには3つあります。ひとつは『コミュニケーション能力』です。語学力はもちろんですが、特に対話する能力が求められます。これがいちばん大切だという声が圧倒的で、これがないと信頼関係も築けません。そして、『マネジメント能力』。リーダーシップやファシリテーション、コーチングの能力です。最後に『異文化適応能力』。各国の歴史、宗教、文化、そして商習慣を理解して仕事ができることです」

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ダイバーシティや違いを価値に変える組織マネジメント

 企業の外国人採用の増加は、たびたびニュースで取り上げられている。彼らの多くは、数カ国語を話し、目標は「社長になること」とモチベーションも高い。その優れた資質に、危機感をおぼえた日本のビジネスパーソンも少なくないだろう。しかし、いくら外国人を採用したからといっても、その外国人を活用するマネジメントができなければ意味はないと、小平さんは指摘する。

 「ダイバーシティをどう活かすかです。以前は、とにかく採用した外国人を日本企業に適応させようとしていました。つまり、日本人に同化、『日本人化』させるということです。これでは意味がありません。異なる文化や考え方の多様性をいかに新しい価値に変えていくかを考えなければならないのです」

 外国人の活用を考えた場合に、採用する企業にとっては3つの課題があると小平さんは言う。ひとつは「ライフライン(一般適応)」。契約、処遇、社会保障など、雇用の前提になるものである。例えば給与などの処遇で、年功序列の日本の企業に対して、海外では職能によることが多い。次に「コミュニケーション(対人適応)」。日本語が大きな壁となる。最近、日本でも公用語を英語にする企業も出てきたが、まだまだ少数である。この対人適応には、服装や時間のマナー、職場の人間関係も含む。そして、最も大きな課題ともいえるのが「キャリア(職務適応)」。日本の場合は長期雇用を前提とし、人材育成もOJTなどで時間をかけて行う。しかし、アジアでの平均勤続年数は3〜5年。日本企業に多い長期間でのキャリア形成では、彼らにとっては、いつまでたってもキャリアを形成できず先が見えないということになる。

 小平さんは、この12年間、1000社を超える企業へのインタビューや実務を通し、「多様性を新しい価値に変えるには、どうしたらいいか」を理論化した。それが、『未来を創造する組織マネジメント―違いを価値に変える6段階モデル』だ(【資料1】参照)。未来を創造するグローバル組織をマネジメントするには、この6つのステップを踏んでいく。

 第1段階は「理解(過去に適応する企業)」。企業の制度・ルールを最低限理解させ、職業人としての「社会人化」を果たすこと。第2段階が「信頼(過去に適応する職場)」。職場における意思の疎通や職務そのものへの適応を通じて、業務プロセスを把握し、オペレーションを実行するという「自社人化」を果たすこと。ここまでは、外国人を日本人に同化させるプロセスであるが、多くの企業ではここが目的化してしまっている。しかし、このままでは多様性を活かすことはできない。「外国人のなかには、日本に憧れてくる人もいます。そうした人は『日本人化』で満足するかもしれませんが、志の高い人は辞めていきます。外国人を採用するのなら、次のステップ、未来を創造するステップに進むべきです」

 第3段階は「提案(未来を創造する職場)」。特定の職場、自身の担当領域・分野においては判断や新たな提案を行い、共同創造、イノベーションの創出を果たす「専門家」としての能力を発揮すること。中国人としてどういう発想をするのか、インドネシア人としてどんな工夫をするのか、それを引き出していきます。第4段階は「展開(未来を創造する企業)」で、特定の職場で起こった成功事例を全社に展開する段階であり、「他人と代替がきかない唯一の存在としての『個人』を確立し、多様性を会社の価値に変えるステップです。ここまでのステップで成功体験ができると、その制度を全社的に広げ定期的に外国人を採用するようになります。そうなると第5段階『深化(未来に適応する企業)』、第6段階『文化(未来に適応する職場)』に移ります。ここに至ると、制度が外部に対して適応的になり、多様性そのものが企業文化となりつつあるため、外国人、日本人といった国籍の違いを超越した状態になっていくのです」

 そして、大切なのは組織も現場の日本人マネジャーも、自分達がいまどこの段階にいるのかをしっかりと把握すること。そうすれば、何ができていて、これから何をすればいいのかが分かる。それぞれのステップで検証を行いながら次のステップに移る、この6つのステップが、いわばグローバル組織づくりの道標となるのだ。

企業に適応する「社会人化」、業務プロセスを理解する「自社人化」に始まり、人材がもつ多様性を引き出しながらイノベーションを実現する創造支援の段階へと移行する
出典 小平達也「未来を創造する組織マネジメント-違いを価値に変える6段階理論-」

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「議論」と「対話」の違いを
うまく使い分けてコミュニケーションする

企業のグローバル化を成功させるために、現在では外国人社員の多様性を活かす人事マネジメントが重要となっている。小平さんは、現場のマネジャーに「議論」と「対話」を使い分けたコミュニケーション術が求められていると語る

 このようなグローバル組織をマネジメントしていくには、人事制度づくりが大切になってくるが、それを執行するのは現場のマネジャーである。どんなに質の高いグローバル組織の制度ができあがっていても、ラインのマネジャーの力量に成否が左右されてしまうともいえる。組織のグローバル化は、まずグローバルマネジャーの育成にかかっていると小平さんは強調する。実際、職場に外国人が入ってきてコミュニケーションに戸惑っている日本人マネジャーも少なくないだろう。それではマネジャーとしては、どんなコミュニケーション能力が必要となってくるのだろうか。

 「先ほどグローバル人材に求められる資質を述べましたが、基本的には同じです。特に、日本人が弱いのが、異文化への適応です。つまりは多様性を理解し受け入れること。そのためには、異文化についてよく知る必要があります」

 小平さんは、外国人採用の面接での注意ポイントを例に挙げた。その国の社会情勢などにより、思考が左右されるという社会心理学的な分析例だ。例えば、日本人とベトナム人に「○○はできますか?」と質問したとする。すると、自分の過去の経験を振り返り、実績に応じて “ できる・できない ” を答える。これは同質型の社会で見られる傾向だという。同じ質問をインド人、中国人にすると、過去の経験は関係なく、将来自分が “ できる・できない ” で、答える。これは異質型社会に見られる傾向で、社会が不確実なせいもあり、自分を信じるしかない。とにかく一歩を踏み出そうという意識が働くと小平さんは分析する。

 そして、マネジャーとして求められるのは、「違いを価値に変える6段階モデル」の第3段階である、違いをもつ人材から、新たな提案を引き出し、イノベーションを創出することである。このコミュニケーションには、あるテクニックが必要だという。

 「『議論(discussion)』と『対話(dialogue)』をうまく使い分けてコミュニケーションをすることです。『議論』は、ご存じのとおり、解決すべきアジェンダがあって、AかBかを選択するというアプローチです。日本人は比較的苦手だと思われがちですが、これは訓練すれば意外とできるものです。一方、第3段階で必要となるのが『対話』です。明確なアジェンダもなく、AでもBでもないXをともに描くというアプローチです。つまり、決まった答えがない。一概に国民性と結びつけられるとは限りませんが、日本人はどちらかというとこの対話型だといわれます。これがうまくできると、違った発想の提案を引き出すことができます。実は、コミュニケーションのうまいマネジャーは、無意識のうちにこの『議論』と『対話』を使い分けています。また、コミュニケーションで行き詰まっている場合は、この理論を知るだけでもずいぶん楽になると思います。

 テクニックとしては、『議論』は意見を提示しますが、『対話』は意見をいったん保留すると良い場合がある。質問の仕方も前者ではクローズド・クエスチョンで、 “ Yes/No ” で答えられる質問や、『いつ』『どこ』『誰』といった限定的な質問をします。一方、後者ではオープン・クエスチョンで、『なぜ』『いったいどうやって』『どんな風に』『どのような姿が望ましいのか』といった拡大質問をしていきます。こうしたスキルはロールプレーイングなどの研修で磨くことができます」

 このように、これからのグローバル競争を勝ち抜くには、異文化に適応し、対話する能力を身につけたグローバルマネジャーによる組織のマネジメントが求められている。もちろん、真のグローバルマネジャーに国籍は関係ない。小平さんは最後にこう付け加えた。

 「日本人には自分がこうだと思ったときにやり抜く、ポジティブな意味での “ 我慢強さ ” があります。 “ ものづくり ” にも表れているこの我慢強さは日本人の強みだといっていいでしょう。日本人がグローバルビジネスで戦っていくには、こうした強みも大切にしながら、異文化を理解し、外国人とともに未来を創造していける組織をつくっていかなくてはなりません。そのためにもグローバルマネジャーを目指す人は、多様性を体感する意味でももっと海外へ出てほしいと思います」

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