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  • 信頼関係で危機を乗り越え 世界が注目する難工事を成功へ 金子 泰丈 氏

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2013年、「アジアとヨーロッパをつなぐ鉄道の誕生」として、世界的な注目を集めたトルコ・ボスポラス海峡横断鉄道が開通した。この難工事を技術面から支えたのが、日本を代表するゼネコン・大成建設。異文化のなかで、大プロジェクトを成功に導くまでの思いを、プロジェクトマネージャーを務めた金子泰丈さんに聞いた。

金子泰丈氏(かねこやすたけ) 大成建設株式会社 国際支店 管理部 事務センター(トルコ) 事務センター長

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アジアとヨーロッパをつなぐ鉄道の建設
遺跡により工期が遅延
「相手の話を聞く」ことが信頼関係を築くためのスタート
経験を活かして、この国で次の一歩を

アジアとヨーロッパをつなぐ鉄道の建設

施工トンネルのルート図。

 2013年10月13日。この日、建国90周年を迎えたトルコのイスタンブールで、ボスポラス海峡を横断する地下鉄道の開通式が華やかに開催された。

 アジアとヨーロッパを隔てるボスポラス海峡に海底トンネルを建設し、イスタンブールの街を横断する地下鉄を走らせて、都市の利便性向上と渋滞解消を実現する。トルコ政府の「悲願」ともいわれ、日本政府も円借款の供与を通じて支援してきたこの一大事業は「マルマライプロジェクト」と名づけられ、世界的にも大きな注目を集めてきた。そのなかでも最大の難関といわれた海底トンネルの建設工事を担ったのが、日本の大成建設である。

 「マルマライプロジェクトは、イスタンブール市を走る既存の鉄道路線の改修・移設、ボスポラス海峡を挟んだヨーロッパ側とアジア側をつなぐ、海底トンネルを含む新たな地下鉄道路線の建設、そして列車の導入という、大きく分けて3つの部分からなるプロジェクトです。当社は、トルコのゼネコン2社と共同で、そのトンネル建設と駅舎の建設の部分を担当しました」

トンネル開通後に列車内にて。

 そう説明してくれたのは、大成建設 国際支店 管理部 事務センター(トルコ)勤務の金子泰丈さん。プロジェクトがスタートした2004年から現地で事務方スタッフとして活躍し、2010年からは事務センター長となった。日本から送り込まれた同社エンジニアたちのほか、協力企業の社員や現地スタッフなど、ピーク時には400名近くにのぼった人員と共にプロジェクトを成功に導くべく奔走した。

 「業務内容は非常に幅広く、支払管理や税金、労務管理、現地会計、現地制度の把握、異国の地に来た日本人の為の福利厚生、IT環境の構築等々……。プロジェクトを運営していくための、技術的なこと以外のすべてと言ってもいいと思います」。金子さんはそう振り返る。

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遺跡により工期が遅延

沈埋トンネル部の工事イメージ。

 今回建設されたトンネルは、全長約13.6キロメートル(うち海底トンネルは約1.4キロ)、海面からの深さはもっとも深いところで60メートルにも及ぶ。さらにそのトンネルに沿って、4つの地下鉄の駅を建設するという大工事。しかし、その最大の特徴は、規模よりもむしろ用いられた工法の多彩さにあった、と金子さんは言う。「ありとあらゆる工法が用いられて、さながら『土木工事の博覧会』でした」。

 例えば、最も長い距離に用いられたのは、東京などの都市土木の現場でもよく使われる「シールド工法」。シールドマシンという掘削機で、前方の地盤を破壊して掘り進めながら、機械の後方で同時にトンネルの外壁を構築していくというものだ。

 一方、海底トンネル部分には、あらかじめ海底に掘った溝に鉄筋コンクリート製の箱を並べてつなぎ、最後に土をかぶせて元の海底地盤の状態に戻す「沈埋工法」を採用。さらに、ボスポラス海峡のヨーロッパ側に位置するシルケジ駅の真下では、山岳トンネルを掘る場合に用いられる『NATM工法』が用いられた。ひとつの工事のなかで、これだけの異なる工法が並行して用いられるのは、非常にまれなケース。それだけに、前例のない困難にも多くぶつかった。

 「特に、シールド工法で掘ってきたトンネルを、海底下でその先の沈埋トンネルにどうつなぐかというのは、非常に大きなチャレンジでした。事前に測量を重ねながら沈埋函の端に付けられたスリーブにシールドマシンを入れ込んでいく。エンジニアたちの腕の見せどころだったと思います。私自身も、事故なく無事に終わったときにはホっとしました」

シルケジ駅のビザンチン時代遺構。

 さらに、そうした技術的な難しさに加え、イスタンブールという長い歴史をもつ都市ならではの「遺跡」の存在が工事に大きな影響を与えた。

 なかでも、山岳工法で掘り進めようとしていたシルケジ駅周辺は、イスタンブールでも歴史的な観光スポットが集中する旧市街エリア。地上から掘ればすぐさま遺跡にぶつかる。「一番上にオスマントルコの遺跡があり、その下にビザンチン時代の遺跡、そのまた下に古代ローマの遺跡があって、更に掘り進むともっと古い時代のものが……という、いわば遺跡が層をなしています」と金子さんは言う。

 ひとつの時代の遺跡が出てくるたびに、工事を止め、その遺跡をどう扱うのか考古学者らによる議論の結果を待たなくてはならない。貴重な遺跡であればあるほど、海外の研究者や国連機関なども加わって、議論は長期化する。その間、工事は止まったままだ。

 結局、シルケジ駅周辺だけでなく、他の駅舎建設エリアでも多くの遺跡や遺物が発見され、その調査と議論にのべ8年が費やされた。すべての調査が終了したのは2012年、当初の予定ではすべての工事が完了する予定だった2009年4月をはるかに過ぎていた。

 「遺跡調査が終わらないとそのエリアでの工事が始められません。そういった箇所がいくつも発生し、調査の完了した場所、影響の及ばない範囲だけ工事を進める。当初、同時並行で進める予定であった工事を順番に行わざるを得ず、結果として工程が蛇腹のように延びていきました。建国90周年には完成させたいというトルコ政府の強い要望を尊重しエンジニア達が知恵を出し合ってギリギリで間に合わせました。おかげで開通式の日の早朝まで、現場では点検などの作業をしていました」

 最終的には予定工期の倍、着工から10年近くを経ての完成。それでも、その開通がトルコの人たちにもたらした喜びは大きかった。以前は橋が渋滞すれば、車で1時間かかることも珍しくなかったボスポラス海峡が、地下鉄に乗ればわずか4分で渡れる。金子さんも工事中から、街で出会ったトルコの一般の方から「いつ完成するのか」と尋ねられたりして、期待をひしひしと感じていたという。

 「一般の人たちが便宜を享受するプロジェクトの価値は、やはり非常に大きい。インフラ技術を通じて社会資本の形成をお手伝いすることの意義を再認識しましたし、その工事に携われたことに喜びを感じました」

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