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経済成長著しいアフリカのゲートウェイ、モロッコ。発電インフラ未整備のこの地で、アフリカ初の高効率石炭火力発電所を建設、運営・売電まで担うプロジェクトを推進しているのが、日本の総合商社、三井物産だ。国創りにかかわる巨大プロジェクトはどのように形作られていくのか。陣頭指揮をとる電力事業開発部部長の宮田裕彦さんが、そのプロセスと醍醐味を語ってくれた。

三井物産株式会社 プロジェクト本部 電力事業開発部部長 宮田裕彦氏 Hirohiko Miyata 1962年生まれ。87年、東京大学工学系大学院修士課程修了、三井物産株式会社入社。プラント・プロジェクト本部プロジェクト開発部にてインドネシアの「パイトン石炭火力発電プロジェクト」などを手掛け、95年より米国三井物産株式会社機械課アシスタント・ジェネラル・マネージャーとして米国に赴任。99年、プラント・プロジェクト本部に復帰。電力事業部事業開発第一室室長、経営企画部企画室次長、プロジェクト本部電力第三部次長

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世界最高の日本の技術でモロッコのインフラを構築
同床異夢から合意形成までの長いプロセス
巨大プロジェクトでも基本は人対人の信頼関係
挑戦しなければ見えない風景がある

世界最高の日本の技術でモロッコのインフラを構築

サフィプラント完成予想図。

 日本が新成長戦略として推し進める「インフラシステムの海外輸出」。その重点分野のひとつ「石炭火力発電・石炭ガス化プラント」の分野で、モロッコでの電源開発に乗り出しているのが三井物産である。

 「サフィ石炭火力発電プロジェクト」と呼ばれるこの案件は、モロッコの首都ラバトの南西約300kmにあるサフィ地区に、発電容量約1250MWの石炭火力発電プラントを建設・運営、完成後30年間にわたってモロッコ電力・水公社に売電するというものだ。最新の超々臨界圧石炭火力技術(水の臨界点(374℃、218気圧)を超える超高温超高圧(593℃以上、237気圧以上)で蒸気を電気に変換する、二酸化炭素等の温室効果ガス排出量が低い高効率発電技術)を取り入れたアフリカ初の発電プラントとしても注目されており、完成の暁にはモロッコの電力の約2割を供給する発電所となる。

 「アラブの春以来、北アフリカには政情不安の印象があるかもしれませんが、アフリカのゲートウェイであるモロッコは政情が安定していて経済発展も著しく、それに伴い電力需要も年間7%ほど伸びています。ところが、電力の約15%はヨーロッパから輸入しているのが現状で、モロッコとしては当然のことながら電力を自給したい。こうしたなかで立ち上がったのが今回のプロジェクトです」

 同社プロジェクト本部電力事業開発部部長・宮田裕彦さんは、背景についてこう説明する。一国のインフラ事業そのものに日本企業がかかわる案件は、日本にとっても重要な意味をもつ。総事業コスト約26億ドルのうち、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)など日本の制度金融が約14億ドルもの融資をしていることがその証だろう。インフラビジネスは同社にとっても中核事業の位置づけだ。

 「決められたシナリオがない」と宮田さんが語るエネルギーインフラ分野のプロジェクトは、スパンが非常に長い。これはエネルギー事情が国によって異なることと、関係者が多岐に亘るためだ。例えば資源のない日本は、石油・ガス・石炭など一次エネルギーを他国から得て二次エネルギー、つまり電力をつくり、安定供給する事業モデルをつくり上げている。モロッコの場合、電力事業モデル、インフラそのものが出来上がっていない。そのため、同社が、日本の技術と巨額の融資や完工に向けたプロジェクト推進のノウハウを携えシナリオを描いているのだ。

 今回のプロジェクトも、発表されたのは08年。10年の入札を経て、宮田さんがプロジェクトを率いることになったのが12年。13年にモロッコ電力・水公社と売電契約を結び、翌14年に融資契約を締結、着工にこぎつけ今に至る。

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同床異夢から合意形成までの長いプロセス

サフィ案件のパートナーの方々と。

 気の遠くなるような年月と労力を要するインフラ案件の構築は、実際どのように進められるのか。「まず、入札時に明らかにされたモロッコ側の要望に添って発電プラントを詳細に設計し、その設計をもとに主要機械の購入先、発電所の建設会社、資金の調達方法を検討します。さらに、プラントの建設後に経営する組織体制、運転保守方法を決めていきます」と宮田さん。建設、融資、売電等々、行く手に待つ契約交渉は膨大だ。しかも議論を重ねる相手は業種も国も多岐にわたる。今回、ともにプロジェクトを推進するパートナーは、モロッコの王族系企業ナレバ社と、フランスのGDFスエズ社(現在はENGIE社)。建設業者は韓国の企業、主機のメーカーは日本企業だ。銀行団も日本、欧州、モロッコ、サウジアラビアにまたがる。

 「当然のことながら当初は関係者の希望も考え方もさまざま。いわば同床異夢の状態。話し合いでそれを調整し、それぞれにとって経済性が見合うか否かを確認しながら、合意形成を図ります」

 スパンは長くても時間が無尽蔵にあるわけではない。時間が経てば世界の情勢は変わる。数年前に必要とされていたものが不要になるケースもあるし、それに伴い、かかわるプレイヤーにとっての優先順位も変わる。適度なスピード感をもって臨むことが求められ、時間的プレッシャーもかかる。インフラビジネスにおいて最も困難なのは、相手国にプロジェクトの重要性やプロセスを理解してもらうことだと宮田さんは言う。

 「モロッコにとって、今回のプロジェクトは未知のもの。まずは、その重要性を理解してもらうことから始め、そのうえでモロッコ側に決定を委ねる項目を示し、期日までの判断を促します。期日が守られなければ後の工程に支障が出て、プロジェクト自体が頓挫してしまうことになりますから。しかし、これを理解してもらうのに非常に時間がかかるのです」

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