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プロジェクトにかかわる全員のベクトルを合わせ、目的意識をひとつにする――。海外における大規模プラント建設事業の全体を統括し、人と技術、資材はもとより、コストや工程のマネジメントまでも引き受ける「エンジニアリング会社」の責務は大きい。その最前線でいくつもの苦難を乗り越え、インフラ事業を完遂させてきた岡崎真一さんに、プロジェクトマネージャーの資質と役割、日本の強みを聞いた。

東洋エンジニアリング株式会社 執行役員 インフラ事業本部 インフラプロジェクト本部 本部長代行  岡崎真一氏  おかざき・しんいち  1956年生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。81年、エネルギー、石油精製、石油化学、肥料、パイプラインなどの大型プラントの設計・資機材調達・建設を行う東洋エンジニアリング株式会社に入社。工事本部に配属され、国内外のプラント建設を多数経験。プラント事業本部、基本計画本部、海外プロジェクト本部等での要職を歴任し、2014年4月より現職。現場を愛し、今も日本と海外を飛

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外部資本を統合しプラント建設をコーディネートする
海外への憧れに導かれエンジニアリングの世界へ
管理能力、コミュニケーション力、語学力が問われる仕事
世界の人々とつくり上げる、インフラのJAPAN ブランド

外部資本を統合しプラント建設をコーディネートする

岡崎さんが手がけられたタイ向け発電プロジェクト。

 タイでは1992年から、SPP (Small Power Producers)と呼ばれる小規模発電プログラムを導入している。小規模発電事業者の市場参入を活発化させ、高効率のエネルギー活用を実現させることが主な目的だ。

 「電力は、需要者の近くで発電し、近くから送電するほうが、効率がよいのです」。タイでいくつもの発電所建設に携わってきた岡崎真一さんは言う。「タイ政府の承認を受けた小規模発電事業者は、需要のある場所に小型の発電プラントを作って売電できます。一種の電力自由化ですね。SPPプラントで発電された電力は、国がベースロードを確保するために90MWまで買い取り、事業者は余剰電力と副産物(熱・蒸気・冷却水など)を、自由に販売できるのです」

 2010年から2013年にわたり、岡崎さんがプロジェクトマネージャーとしてタイで指揮した発電プラントの建設も、SPPによるものだった。

 1基につき110MWから120MWの天然ガス焚きコンバインド・サイクル発電所を、期間内に7基建設するというミッションは、時間的な制約のなかでの挑戦でもあったと振り返る。

 「取水設備や水処理設備、電力や蒸気や冷水の送り出しなど、それぞれ構成が異なる複数のプラントを、ほぼ同時期に7カ所で立ち上げるのです。世界でもあまり例のないプロジェクトでした。7つのプラントのうち、ひとつたりとも納期に遅れることなく、確実に完成させてクライアントに引き渡さなければなりませんから、大きなチャレンジでした。常に時間というプレッシャーに耐え、プロジェクトに従事した全員が、与えられた任務を1つひとつ着実にこなしていったからこそ、達成できたのだと思います」

 そう語る岡崎さんが属する「エンジニアリング業界」。プラント建設のプロジェクトにおいて、それはどのような役割を担っているのだろうか。

 一般的に、発電をはじめとするインフラ関連大規模施設建設は、いわゆるゼネコンやメーカーが、自社のリソースを活用して直接請け負うことも多い。

 一方、エンジニアリング会社は、石油精製や石油化学プロジェクトで培った“人や資材を外部から広く調達する”、“さまざまな企業や人材を集めてプロジェクトチームを編成”し、人、知識、技術、資材、設備などを有機的に統合。その全体を、スケジュールやコスト管理も含めてマネジメントするのが特徴である。

 「エンジニアリング会社は、クライアントの要望や諸条件に応じて、さまざまなメーカーの製品を適切に組み合わせて、プロジェクトを遂行します。施工業者の選定についても同様です。エンジニアリング会社は、一連の業務をクライアントに代わってすべての責任を負い、実行していきます」

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海外への憧れに導かれエンジニアリングの世界へ

「プロジェクトにかかわる全員のベクトルを合わせ、目的意識をひとつにすることの重要性を学んだ」と語る岡崎さん。

 1959年から30年以上にわたってテレビ放映された、「兼高かおる世界の旅」。海外旅行番組、外国の町や風物紹介番組の“はしり”ともいうべき、そのテレビ番組を見て、「世界にはこんな場所があるのか」「こんな人達がいるのか」と、少年時代の岡崎さんは胸を躍らせて育った。いつか自分も海外へ行ってみたいという憧れも、成長とともにふくらんでいった。

 高校生になると、北杜夫の小説『どくとるマンボウ航海記』に触発され、船医となって世界を旅することを夢見ていた。残念ながら大学入試では医学部に入ることはかなわず、他の海外に出る可能性を探り資源工学を専攻した。海外旅行がそろそろ一般的になろうとしていた時代である。

 「とにかく『海外に行けます』というひと言でビビッときて、自分が何を専攻してきたかなどは考えることもなく今の会社に就職したようなものです(笑)。当時、エンジニアリングとはどういう仕事なのかも、よくわかっていなかった気がします」

 長年の夢がかなって初めて海外に出たのは、入社2年目のこと。石油精製関連のプラント建設のために、2年間の予定で東ドイツ(当時)に赴くことになったのだ。心を躍らせ旅立った長期海外出張は、何もかもが新鮮な経験だった。

 「プロジェクトは多様な人が集まってチームで進めます。このときは直属の上司がイギリス人、仕事仲間の大半はドイツ人、建設業者はユーゴスラビア(当時)人でした。英語と、大学時代に学んだ片言のドイツ語を頼りに、夢中で駆け回る毎日でした。工事の終盤にはパイプラックの上によじ登り、ワーカーに混じって作業をしたりもしましたね。現場ではたくさんの人達と出会いました。途中でトラブルがあっても、仲間同士で喧嘩をしても、プラントが完成すれば互いに抱き合い、心から喜びを分かち合う。そういう感動や、仕事の醍醐味を知ったのも、大きな収穫でした」

 これを皮切りに、岡崎さんは次々と海外でのプロジェクトにかかわっていく。日米でコンソーシアムを組み、さらにアジアの国のゼネコンを加えてプロジェクトを遂行する現場を経験したときのこと。多様な国籍、多様なバックグラウンドをもつ人々は、考えることも見ている方向もバラバラで、まるで足並みがそろわない。全体を調整統括するエンジニアリング会社の担当として、岡崎さんは出口の見えないトンネルに迷い込み、暗中模索に苦しむ3年間を過ごした。

 「このとき学んだのは、プロジェクトにかかわる全員のベクトルを合わせ、目的意識をひとつにすることの重要性です。また別のプロジェクトでは、コンソーシアムを組んだ同業他社の先輩から、人を説得するには、確固たる技術的な裏づけやロジックが欠かせないこと、何かを提案する際には、物事のバックボーンや、そこに込められた精神や背景をふまえて行うことが大事だということを学びました。このふたつの経験は、物事を判断・決断するうえで、今も私の指標となっています」

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